黙示録が始まった

最初の症例は渋谷駅で現れた。山手線から降りてきた通勤客がよろめき、灰色の顔で、ホームに崩れ落ちてから機械的な遅さで立ち上がった。ガラスのような目、だらりと下がった顎。駅員は最初、過労だと思った。東京のラッシュアワーでは、それは珍しいことではない。そして噛みつきが始まった。

二時間以内に、東京メトロと都営地下鉄、十三路線、二百八十六駅、一日に九百万人を運ぶあのシステムが屠殺場になった。丸ノ内線、あの赤い線、荻窪から池袋まで東京の背骨を走る路線が死の罠になった。満員の電車が走り続け、ドアは開かず、叫び声が車両ごとに消えていった。大手町の乗換駅、五つの路線が交差する地下の迷宮で、数千人が改札と灰色の潮の間に挟まれた。

地上では、東京はすぐには理解しなかった。渋谷のスクランブル交差点では、世界一有名な交差点で、一回の青信号で三千人が渡るあの交差点で、人々はまだ写真を撮っていた。最初の感染者が地下鉄の通気口から這い出てきたとき、センター街の光の中でよろめきながら、ハチ公像の前を通り過ぎた。ハチ公、あの忠犬は九十年間ここで待ち続けていて、今夜初めて、帰ってくるべきでないものが帰ってきた。人々は撮影した。もちろん撮影した。浦和レッズのユニフォームを着た男が原宿のクレープ屋の店員に噛みついた動画は、四千六百万回再生されてからインターネットが死んだ。

首相は18時47分に官邸から国民に語りかけた。19時15分には官邸は暗かった。20時02分には警視庁の桜田門で誰も電話に出なかった。日本は関東大震災を生き延びた。東京大空襲を生き延びた。原爆を生き延びた。二度の核を経験した唯一の国が、三度目の終わりを迎えていた。

自衛隊は山手線の環状ルートに沿って封鎖線を張ろうとした。しかし東京は封鎖できる都市ではない。千三百万人。二十三区。地下鉄とJRと私鉄が蜘蛛の巣のように絡み合い、その下にさらに地下街が広がり、その下にさらにトンネルがある。東京は都市ではない。東京は生態系だ。そして生態系は、一つの壁では止められない。

歌舞伎町が最初に落ちた。新宿のあのネオンの迷宮、ホストクラブとラーメン屋と漫画喫茶が同じビルの中で積み重なっている場所で、悲鳴はカラオケの音に紛れて消えた。秋葉原では、メイドカフェとフィギュアショップのシャッターが降りた。六本木では、外国人バーのカクテルグラスが割れたまま放置されていた。下北沢では、古着屋とライブハウスの間の路地に静寂が降りた。

渋谷109の前で、あのファッションビルの前で、スクランブル交差点の巨大スクリーンはまだ点いていた。広告を流し続けていた。最新のアイドルグループの笑顔が、誰もいない交差点を照らしていた。

東京ドームの五万五千席は空だった。国立競技場、隈研吾があの二〇二〇年オリンピックのために設計したスタジアム、木のファサードが月光に輝いて、美しくて、無意味だった。

東京タワーは、まだ赤く光っていた。スカイツリーは、まだ青く光っていた。二つの塔が、返事をしない街を照らし続けていた。皇居の森は暗く、静かで、堀の水面に何かが映っていた。何かが動いていた。

東京。眠らない街。世界で最も秩序ある都市。列に並び、時刻表通りに電車が来て、誰もが自分の役割を果たす街。

今夜、秩序は終わった。

そして闇の中、超高層ビルとコンビニと神社の間で、千三百万の口が開いた。話すためではなく。叫ぶためではなく。すみませんと言うためではなく。噛むために。

7つの役割。28日間。失敗の余地なし。

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